その少女はいつも一人、神社で楽しそうに虚空に手を差し伸べ、柔らかく微笑んでいた。歳の頃は5歳?6歳?ふわりとした軽やかなスカイブルーのワンピースをまとい、虚空を撫でるさまは、まるで傍目には目に見えぬ「なにか」と語らっているようであった。
「ねぇ、ねぇ。あなた、何してるの?」
いきなり背後から声を掛けられ、一瞬ピクッと軽く身をすくませた少女は恐る恐る、背後を振り返った。そこにいたのは亜麻色の髪をツインテールにふわりとまとめ、大きな目を好奇心でクリクリと輝かせた同年代の少女であった。突然声をかけられた少女は相手が自分と同年代であると知ると、ホッとしたようにまた虚空に目を向け、にっこりと微笑んだ。
「たまゆら・・・・・」
「え?なに?」
「わたしは・・・・・たまゆら・・と・・お話し・・してる・・・・・・」
「?おはなし?」
「うん、おはなし・・・・」
一見、子供の会話は成り立っていなさそうにみえる。しかし・・・・。
「あなた・・・・、もしかして!このぽわぽわとおはなしできるの?!」
「!!!!」
子供の会話はロジックではない。魂の共鳴だ。だからこそ、拙い表現力でも心が触れ合えば大人の淀んだロジックを上回る情報量で、双方向に心の交流が可能だ。ツインテールの少女はワンピースの少女の言っていることを瞬時に理解したのだ。
今自分が「おはなし」している存在を、このツインテールの子も同じように見ているのだと。
「あなた、もしかして・・・・・たまゆらが・・・・・みえるの?お母さんは「おかしな子って言われちゃうから、あなたが「見える」ってことは人に言っちゃダメよ?」っていうの・・・・・・」
「???このぽわぽわのこと、あなたはたまゆら、っていうのね?わたしね!このぽわぽわといっしょにいるとわたしもぽわぽわしてくるから、すっごくすきなんだ!でもね、この神社にしかいないの。鳥居からお外に出るときえちゃうの。それがわたし、ちょっとさびしいな。(にっ)」
ワンピースの少女は驚愕したように口を開く。自分以外にも同じ景色を見ることができる「仲間」がいた。驚きと喜びを込めて恥ずかしげにおずおずとツインテールの少女に尋ねる。
「・・・・・あなた、お名前は?なんていうの?」
「りお!りおっていうんだよ!あなたはっ?!」
「・・・・・せおり・・・・・」
「せおり!キレイなお名前だねっ!せおりちゃんって呼んでいいかなっ?!」
「・・・・・いいよ・・・・・わたしも・・・・・りおちゃんって呼んでいい?」
「うんっ!いいよっ!!これでわたしたち、おともだち、だねっ!」
「・・・・・・おともだち?・・・・・うれしい・・・・」
瀬織と莉緒の絆は神域においてたまゆらが繋いだのである。

コメント