第0章 第21節 日本という名の温もり ― 莉緒の腕と救国の誓い② ―

違う。痛いのは、お前のせいじゃない。

俺は何も言えずに、ただこの小さな、尊い温もりを再び強く抱きしめ返した。

 すると、莉緒がまた、あの無敵の笑顔で言うんだ。 

「せんせえ! いたいよ・・・。」

「・・・・でも、次はりおが、ぎゅーってしてあげるねっ!」

俺の頬を熱いものが伝い落ちた。あふれる涙を止めることが出来なかった。

莉緒の目も憚らず、声を押し殺して泣いた。

「(ああ、俺の残りの命を賭して守らねばならぬ魂、がここにある。この子は日本そのものだ。失われゆく日本の美徳を、必死でその形に留めている幼き魂。俺はこの子の未来を、この子が笑える日本を、絶対に守り抜かねばならん!)」

莉緒は俺が泣き止むまでずっと、その小さな腕を俺の首に巻き付けて、何も言わずにそのぬくもりを分け与えてくれた・・・・・。まるで、俺の魂の澱をすべて吸い取ってくれるかのように・・・・・・。

それからだ。俺はただの「癒し手」であることを止め、不退転の決意で救国という修羅の道へ足を踏み入れたのは。俺には政治や人を動かす力はない。だからせめて患者の痛みや辛さを取り除くことで、この日本を照らす貧者の一灯になろう、と思った。

俺は・・・・莉緒が抱きしめてくれた時に感じた柔らかな温もりをトリガーとして、崩れゆくこの国、日本を、力及ばずとも支えてやろう、無言でそう莉緒に誓ったのだ。

それからだ。

俺の施術記録が狂気すら孕んだ異様な熱量と解像度を帯び始めたのは・・・・

その原点はあの日、莉緒の小さな腕の中で俺という男が「再生」したこと、なのだ。
・・・・・・莉緒との思い出は、こんなところだ、・・・・・


俺のつまらぬひとり語りに付き合わせてしまったな。済まなかった。

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