「(せおりちゃん、かわいい子だったなー。おとなしい子みたいだけど、なんだか、消えちゃいそうで、ギューってしてあげたくなっちゃうなっ!えへっ。えへっ。えへへへ。でも、ホントにギューってするのは、ちょっとはずかしいな。うふっ、うふっ、うふふふ。)」
帰宅すると莉緒は居間のソファに座るとクッションを抱きしめながら、そして更にうふ、うふ言いながら顔をクッションに埋めてかぶりをふる。その両頬はすでに健康的な薄ピンク色に染まっている。
「(うふふふ。あした、楽しみだなー!せおりちゃんのたからものってなんなんだろ?)」
莉緒の小さな胸は明日への期待で張り裂けんばかりに膨らんでいたのである。
「莉緒ー、ごはんよー。クッションをそんなふうに抱きしめてないで、早く食事になさい。冷めちゃうわよー。」
「はーい、おかあさんっ!いまいくよっ!」
莉緒は赤面した顔をごまかすよう元気よく返事をし、食卓に向かう。そこへ父が帰宅した。
「おとうさんっ!おとうさんっ!りおっ、今日ねっ!おともだちっ!できちゃったっ!すっごくうれしいの!!」
お父さんと呼ばれた男性は上着を脱ぎ、ハンガーに掛けると、莉緒に向き合うよう椅子に腰掛けた。
「ほー、莉緒におともだち、ねー。お前は元気すぎるから、その新しいお友達に迷惑かけちゃいけないぞ?ちゃんとお友達の顔、表情を見て、お話したり、遊んだりするんだぞ?お前が楽しいだけじゃなく、そのお友達も楽しくならなかったら、ダメなんだぞ?いいね?」
「あなた、莉緒には、まだそのような機微を伝えるのは難しいのではなくて?莉緒、お父さんはあなたには「お友達と仲良くしなさいね。」って言ってるのよ?分かるわね?」
「ああ、スマンスマン。ついつい会社での仕事の人間関係を引き合いに出しちゃうからな。そうだな、莉緒には「仲良くしなさいね」これが一番伝わるな。うんうん。」
「はーい。おとうさん、おかあさん分かったよっ!りお、せおりちゃんとなかよくするねっ!」
「莉緒、お友達はせおりちゃん、というのか・・・。どんな子、なの?」
「んーっとねっ!すっごくキレイでかわいい子なんだよ!りおがギューってしてあげたくなっちゃうくらい、かわいい子、なの!」
「そんなにお前が喜んでいる「お友達」っていうのは久々、だな。今まではお前が泣かしたり、泣かされたりが多くて、今も続いているお友達は・・・・。」
「あなた・・・・もうよろしいじゃありませんか。莉緒が新しいお友達に出会って、とっても喜んでいる。それを私たちは親として喜びましょう。」
「あ、ああ、そうだな・・・・。莉緒、そのせおりちゃんにお父さんとお散歩の時、出会うことがあったら教えてくれよ?お父さんもお前のお友達にご挨拶したい。(にっこり)」
「うんっ!わかったよ!・・・・じゃなくて、はいっ!わかりました!おとうさん!りお、来年はしょうがくせいだもんね。ちゃんとことばづかい、直さないとね。(にかっ)」
「そうだよ。莉緒。よく出来ました。」
莉緒の夕食は家族の温かい団らんの時間であり、またご両親からの教育の場でもあった。

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