「こらーっ!何やっている!お前たち!神社の境内でいじめなんかするなー!」
社務所から出てきた神職に見つかり、一喝された悪ガキどもは蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
「君たち、どうしたの?なんか、いじめられてたみたいだけど?大丈夫?怪我してない?社務所に行こうか?親御さんに連絡するから。連絡先、教えて?」
莉緒はまだ仁王立ちのままである。
「ふぐっ!ふぐっ!ぐぎぎぎぎぎ!」莉緒の両頬には涙が光っていた。
「せっ、せっ、せっおりちゃん、大、丈、夫っ?!」莉緒はそこまで言うと号泣した。
「うっわあああああああん!」
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「ごっ、ごめんねっ!ごめんねっ!りお、せおりちゃんとイセポのこと守れなかったよ!ほんとうにごめんねっ!りお、せおりちゃんとイセポのこと守れるくらいつよくなるから!絶対につよくなるから!!今日は・・・・今日は・・・・許して・・・・・ね。ふっぐっぅぅぅ。」
莉緒は拳を固く握りしめたままうつむき、大きく見開いた双眸から、真珠のような大粒の涙をぽろぽろと流した。瀬織に許しを乞い、そしてまた慟哭した。
単にいじめっ子が怖かったのではない。
己の弱さを呪い、親友を救えなかった不甲斐なさから、莉緒は号泣したのである。
莉緒がいじめっ子に感じた恐怖などは、とっくにあさっての方へ飛んでしまっていた。
「・・・・・・りおちゃん、ありがと。りおちゃん、かっこよかったよ?泣かないで。りおちゃん・・・・・イセポとわたしのこと守ってくれて・・・・・うれしかったよ?泣かないで?ね。りおちゃんは世界一かっこいいんだから!」
神職は二人のやり取りをおろおろとうろたえて見ていたが、意を決し二人を社務所へといざなった。
いつの間にかイセポは瀬織の腕の中から見えなくなっていた。
代わりに神域は無数のたまゆらが舞っていた。
まるで、莉緒の幼い決意、強さへの渇望と決意を祝福するように・・・・
瀬織の胸には、莉緒への溢れんばかりの信頼と尊敬が満ちていた。
瀬織は莉緒の涙を見て、いじめっ子への嫌悪より、ついに魂の同志と巡り合えた、という僥倖に歓喜していたのである。
たまゆらの向こう、神域の木立をかすめた彼女たちの頭上には無窮の蒼、どこまでも続く蒼穹が広がっていた。

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